世界中の人間の手を集めて博物館をつくり、平和の施設に、てのひらの作品を設置するのが私の夢である。


by tunisianoyoru

『二十日鼠と人間』

全国の人間について考えるみなさんこんばんわ。
今回はスタインベックの『二十日鼠と人間』についてストーリーイラストを描きました。

この補助教材をどう再利用するべきか…。誰の眼にもふれないまま置いてもよいものか。…など考えました。特に機密事項というわけではあるまいし、私のイラスト作品ということでブログにアップすることをゆるしていただきたましょう。

スタインベックの小説『二十日鼠と人間』の舞台は1930年、今から80年前の大恐慌時代のカリフォルニアの農村。

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頭が切れて物知りの『ジョージ』巨漢だが精神薄弱の『レニー』2人が主人公である。
『ジョージ』は小柄で頭の回転の速い男。『レニー』は巨大な体と子供と同程度の知能を持ち合わせた男。二人は旅する不安定労働者である。
『レニー』は小動物の毛皮などやわらかいものをなでるのをひどく好むが、力加減ができずになでていた動物をいつも殺してしまう。
(ここに一枚レニーがウサギとたわむれるイラストがあったのですが、「このイラストがほしい」と手があがり、プレゼントしましたのでここのイラストがありません。)

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『レニーとジョージ』は、農場から農場へ渡り歩く日々を続けていた。助け合いながら自分たちの夢を語り合う2人は、次の仕事先である牧場に到着する。

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ジョージの夢は自分達の土地を持つことである。レニーの夢はジョージと共に牧場を手に入れ、そこでウサギをたくさん飼育することである。

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男性の気を引こうとする、若く美しい女性。『カーリーの妻』登場。カーリーは牧場主の息子である。『二十日鼠と人間』は1939年にルイス・マイルストンが、1992年にゲイリー・シニーズが映画化している。

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レニーは彼女を小動物を愛しむように触っているうちに、力の加減がわからなくなり、首を締めて彼女を殺してしまう。

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驚いたレニーは逃亡。

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ジョージは死体を発見。

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考えるジョージ。今回はレニーをつれて逃げても追手につかまるだろう。そうすれば自分も同罪になる。つかまればレニーはリンチされひどい殺されかたをするだろう。となればいっそ自分で手を打つしかないのか…。

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カーリーは妻を殺されたことに怒り狂う。みんな銃を手にとって、レニーを惨殺するつもりです。

映画『グリーンマイル』(1999年)を思い出していただくと『二十日鼠と人間』はイメージしやすいです。グリーンマイルでの大男の死刑囚は、触れるだけで病気を治してしまう。彼が電気椅子に送られることについて悩む主人公。という図がある。

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レニーを見つけたジョージは、レニーが苦しまないように2人の夢を語る。

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ジョージは迷いながら、他人の手にかかる位ならと思い、レニーを射殺するのだった。

不条理なものに遭遇したときに、どのような姿勢で生きていくのか?この作品の読後感は後を引く。新潮文庫の昭和52年に訳されたものはあまり感動しなかったので、私は昭和28年発行の大門一男訳を薦めるよ。

余談

『二十日鼠と人間』はスコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズ(1759 ~1796)の詩が作品のタイトルになっている。

『二十日鼠と人間の、最善をつくした計画も 後からしだいに狂ってゆき 望んだ喜びのかわりに 嘆きと苦しみのほかは、われらに何も残さない』。

当時のスコットランドは経済的に破綻し、飢饉が襲い起死回生の策もイングランドの妨害にあい、独立を放棄イングランドに吸収される。
自分達の土地を失うという点は、スタインベックの『二十日鼠と人間』の世界恐慌時代、自分達の土地を夢見る主人公達に重なるところがある。

ロバート・バーンズよりも時代はさかのぼるが、13世紀後半ごろのスコットランドを舞台にした『ブレイブハート』という映画(1995年)がある。スコットランドの独立の気運が高まったころに作られたもの。スコットランド出身のブレア首相(1997~2007)が、スコットランド議会を約300年ぶりに復活させる。バーンズが死んで200年後のことである。

追憶

1994年スコットランド来訪時の、私とM氏との会話を記憶を巻き戻して再生する。

A 「なんだかこの紙幣ニセモノじゃないですか?使えるんですか?」
M 「スコットランドは独自の紙幣があるんだよ。これも同じようにイングランドでも使えるんだよ」
A 「そういうものなんですか、場所によっては使っている紙幣が違うんですね」
M 「でもこれは後で日本円に変えられないかもしれないから、使い切ってしまったほうがいいね」
A 「なるほど」  
            
スコットランドの5ポンド紙幣にロバート・バーンズの顔は使われている。私は紙幣に鼠の絵を見た記憶があるのだ。

雑感

『二十日鼠と人間の、最善をつくした計画も 後からしだいに狂ってゆき 望んだ喜びのかわりに 嘆きと苦しみのほかは、われらに何も残さない』。

私の敗北は、彼らに対して無力であったことでした。このロバート・バーンズの詩は、私の苦い記憶を和らげてくれるものなんですよ。そして今も、この詩が頭から離れません。

文化的な遺伝子を継承できなければ、人間のつながりも作り出すことはできませんよ。
by tunisianoyoru | 2009-07-01 17:04 | 文学編